企業版ふるさと納税の損金算入とは?会計処理と申告書類の記載方法を紹介
企業版ふるさと納税では、寄附金の全額を損金算入できることに加え、法人税・法人住民税・法人事業税から税額控除も受けられます。しかし「会計仕訳はどう処理するか」「申告書のどこに記載するか」が不明確なまま活用できていない企業も少なくありません。
この記事では、損金算入の仕組みから仕訳例・申告書類の記載方法まで、実務担当者が知っておくべき情報を正確に解説します。
企業版ふるさと納税における損金算入

企業版ふるさと納税における「損金算入」とは、寄附金を法人税の課税所得の計算において費用(損金)として認める処理です。損金算入によって課税所得が減少し、法人税の負担が軽減されます。
損金算入の意味と税負担軽減の仕組み
法人税法上、支出した費用がすべて損金(税務上の費用)として認められるわけではありません。たとえば一般の寄附金には損金算入の上限が定められています。損金算入される金額が大きいほど課税所得が減り、それに法人税率を掛けて計算される税額が小さくなります。
企業版ふるさと納税では、寄附金の全額が損金算入の対象となります。100万円を寄附すれば100万円が課税所得から差し引かれ、法人の実効税率(おおむね30%前後)に応じた分だけ法人税等の負担が軽くなります。
国や地方公共団体への寄付として全額が損金算入対象
企業版ふるさと納税による寄附金は、法人税法第37条第3項第1号に定める「国または地方公共団体への寄附金」として取り扱われます。この区分に該当する寄附金は、損金算入限度額の制限を受けることなく全額が損金算入されます。
一般の法人が行う寄附金には、資本金等の額と所得金額をもとに算出した「損金算入限度額」が設けられており、それを超えた部分は損金不算入となります。しかし企業版ふるさと納税は地方公共団体への寄附として扱われるため、この制限の外側に位置します。これが企業版ふるさと納税の損金算入面での大きな優位点です。
なお、この扱いは企業版ふるさと納税が「地方創生のまち・ひと・しごと創生寄附活用事業」として国の認定を受けた地方公共団体への寄附に該当する場合に限られます。認定されていないプロジェクトへの寄附は通常の法人寄附金として取り扱われるため、事前の確認が重要です。
個人版ふるさと納税との税務上の違い
個人版ふるさと納税では、所得控除(寄附金控除)によって所得税と住民税が軽減される仕組みです。対して企業版ふるさと納税では、法人側で「損金算入(法人税の課税所得の減少)」と「税額控除(計算後の税額からの直接差し引き)」という2つの節税手段が適用されます。
また、個人版では返礼品の受け取りが制度上認められていますが、企業版では経済的利益の受け取りが明示的に禁じられています。
企業版ふるさと納税で損金算入と税額控除が併用できる仕組み

企業版ふるさと納税の大きな特徴は、寄附金の損金算入による税負担の軽減に加えて、法人住民税・法人税・法人事業税に関する税額控除を受けられる点です。損金算入による軽減効果に税額控除による軽減効果が上乗せされることで、条件が整えば、寄附額の最大約9割の法人関係税が軽減されます。
損金算入による約3割の軽減効果
企業版ふるさと納税の対象となる寄附は、地方公共団体に対する寄附として、原則として全額が損金算入の対象になります。国税庁も、法人が国または地方公共団体に対する寄附金を支出したときは、原則として支出した全額が損金に算入されると説明しています。
寄附金が損金算入されると、その分だけ課税所得が減少します。法人税・法人住民税・法人事業税を合わせた実効税率をおおむね30%前後と仮定すると、100万円を寄附した場合、損金算入による税負担の軽減効果は約30万円となります。内閣府資料でも、損金算入による軽減効果は約3割として説明されています。
もっとも、損金算入による軽減効果は、課税所得がある場合に実際の税負担を減らすものです。課税所得がゼロまたは欠損の場合には、その事業年度において損金算入による直接的な節税効果が生じないことがあります。
税額控除による最大約6割の控除効果
令和2年度改正後の企業版ふるさと納税では、損金算入に加えて次の税額控除が受けられます。
法人住民税については、寄附額の40%が税額控除の対象です。ただし、控除できる金額は法人住民税法人税割額の20%が上限です。
法人税については、法人住民税で寄附額の40%に達しない場合に、その残額を税額控除できます。ただし、控除できる金額は寄附額の10%が限度であり、さらに法人税額の5%が上限です。
法人事業税については、寄附額の20%が税額控除の対象です。ただし、控除できる金額は法人事業税額の20%が上限です。
このように、税額控除は最大で寄附額の約6割となります。ただし、各税目には控除上限があるため、法人の課税状況や税額水準によって、実際に控除できる金額は変わります。
併用によって最大約9割の税負担軽減が実現する
企業版ふるさと納税では、損金算入による軽減効果が約3割、税額控除による軽減効果が最大約6割となるため、条件が整えば、合計で寄附額の最大約9割の法人関係税が軽減されます。たとえば100万円を寄附した場合、各控除を満額活用できる法人であれば、実質的な企業負担は約10万円程度になる計算です。
ただし「最大約9割」は各控除の上限が制約になる前の理論値です。実際の軽減率は法人の税額規模・所得水準によって変わります。特に法人事業税の控除は「事業税額の20%」という上限が中小企業では実質的な制約になりやすいため、事前のシミュレーションが重要です。
具体的な試算として、法人税・住民税・事業税の各税額をもとに「どの控除が上限に制限されるか」を確認し、最終的な節税総額を把握することが合理的な寄附金額の設定につながります。初めての活用では税理士とともに事前シミュレーションを行うことをおすすめします。
企業版ふるさと納税の損金算入で得られる節税効果

損金算入が法人の課税所得と税額にどのような影響を与えるかを具体的に把握することで、活用判断がしやすくなります。
損金算入が法人税課税所得に与える影響
法人税の課税所得は、会計上の利益に各種の税務調整(加算・減算)を加えることで計算されます。企業版ふるさと納税による寄附金は会計上の費用(損失)として計上され、税務上も同様に損金として扱われます。
そのため、寄附金支出額がそのまま課税所得の減少につながり、特別な税務調整を要しません。一般寄附金のように「損金不算入額を別表4で加算する」という処理が不要である点が実務上の簡便さにもつながっています。
寄附額に応じた損金算入による軽減額の目安
法人の実効税率を30%と仮定した場合の概算を示します。寄附額100万円なら損金算入による軽減額は約30万円、寄附額500万円なら約150万円、寄附額1,000万円なら約300万円の軽減となります。これに税額控除が加わることで、最終的な節税効果が大きく拡大します。
実効税率は法人の規模(資本金1億円超の大法人か以下の中小法人か)や所得水準・所在地によって変わります。正確な節税額を把握するには、自社の適用税率を税理士に確認したうえで試算することが必要です。
また、損金算入による節税効果は「当期の課税所得が発生している」ことが前提です。当期に欠損(赤字)が生じている場合は損金算入の直接的な節税効果は生じませんが、繰越欠損金と合わせた将来の税負担軽減として間接的な効果がある場合もあります。
法人税の実効税率と損金算入効果の関係
損金算入による節税額は「寄附金額×法人実効税率」で計算されます。実効税率が高いほど損金算入の節税効果が大きくなります。たとえば実効税率が35%の法人では100万円寄附で35万円の節税、25%の法人では25万円の節税となります。
法人実効税率には法人税・法人住民税・法人事業税が含まれます。中小企業(資本金1億円以下)では所得800万円以下の部分に法人税の軽減税率15%が適用されるため、実効税率が低くなることもあります。その場合でも税額控除による節税効果は損金算入効果と独立して作用します。
企業版ふるさと納税の会計処理と仕訳例

企業版ふるさと納税の会計処理は、寄附金の支出時・受領証の受け取り後・決算時の3つの段階で考えます。以下の仕訳例はあくまで一般的な処理例であり、会社の会計方針や税効果会計の適用状況によって処理内容が変わる場合があります。
寄附金を支出した時点の仕訳例
寄附金を銀行振込で支出した場合の仕訳は「(借方)寄附金 1,000,000円 / (貸方)普通預金 1,000,000円」となります。法人税法上、寄附金は支出(振込)が完了した日に損金として認識します(現金主義)。
勘定科目は「寄附金」が一般的ですが、「支出寄附金」や「寄付金」など会社の勘定科目体系に合わせて設定します。重要なのは損益計算書上で費用として計上されることであり、科目の名称自体が税務上の扱いを左右するわけではありません。
寄附金受領証を受け取った後の処理
寄附先の自治体から寄附金受領証が届いた後は、証明書類を申告書に添付できるよう保管します。受領証の受け取り自体は新たな仕訳を発生させません。受領証は法人税申告書に添付するための重要書類であり、紛失した場合は自治体への再発行依頼が必要になります。
また、企業版ふるさと納税の税額控除に対応した証明書類(地方公共団体が発行するもの)も添付が求められます。これらは寄附時ではなく申告書提出時に一括して準備する流れが一般的です。
決算期をまたぐ場合の会計処理の考え方
寄附の振込(決済完了)が12月31日(3月決算なら3月31日)以前であれば、当期の損金として認識されます。受領証の到着が翌期になっても、損金算入の時期は「支出(払込)が完了した日の属する事業年度」が基準です。
年度末に駆け込みで寄附を行う場合は、振込処理が決算期末までに確実に完了しているかを確認することが重要です。銀行の営業日・振込締切時間によっては年内に処理が間に合わない場合があるため、12月初旬から動き始めることが安全です。
決算期をまたぐことになった場合(たとえば12月末に申込だが翌年1月に振込)は翌期の損金として扱われます。事業年度の税負担を最適化するには、寄附の実行タイミングを誤らないことが非常に重要です。
勘定科目の選び方と他の寄附金との区別
複数種類の寄附金がある法人では、企業版ふるさと納税による寄附金と一般寄附金・特定公益増進法人への寄附金を区別して管理することが申告書作成のうえで有用です。たとえば「寄附金(企業版ふるさと納税)」のように補助科目を設けることで、申告書記載時の集計が容易になります。
会計ソフト上での管理においても、寄附先・寄附日・金額・受領証番号を備考欄等に記録しておくと、申告書作成時・税務調査時の照合がスムーズです。
企業版ふるさと納税の損金算入で必要な申告書類と記載方法

企業版ふるさと納税の損金算入と税額控除を適切に申告するには、法人税の申告書に加え、都道府県・市区町村への申告書にも所定の記載が必要です。以下の様式番号は一般的な例であり、都道府県・市区町村によって様式が異なる場合があります。申告前に管轄の税務署・都道府県税事務所・市区町村へ確認することを推奨します。
法人税申告書別表6(22)の記載項目
企業版ふるさと納税の法人税における税額控除は、法人税の確定申告書に添付する租税特別措置法関連の別表(税額控除明細書)に記載します。寄附金額・控除率・控除前税額・控除額・控除上限額を記載し、最終的に法人税額から控除する金額を確定します。
損金算入の処理については、企業版ふるさと納税による寄附金は地方公共団体への寄附として全額損金算入されるため、別表14(2)では「国・地方公共団体への寄附金」として計上し、限度額の制限を受けない旨を処理します。損金不算入額は発生しないため、別表4への加算調整は不要です。
法人県民税・法人事業税申告書(第7号の3様式等)の記載
法人住民税(都道府県分)および法人事業税の申告書では、企業版ふるさと納税による税額控除の金額を所定の欄に記載します。申告書の様式は都道府県ごとに異なる場合があります(秋田県など多くの自治体では第7号の3様式または相当の様式が使用されています)。
法人事業税の税額控除は所得割から控除されますが、控除可能額は「法人事業税額の20%」が上限です。申告書に記載する控除額は、この上限と「寄附額の40%」のうち少ない方になります。自社の法人事業税額を確認したうえで控除額を正確に計算してください。
法人市民税申告書(第20号の5様式等)の記載
法人住民税(市町村分)の申告書には、市町村民税法人税割からの税額控除額(寄附額の10%、上限: 市町村民税法人税割額の20%)を所定の欄に記載します。市町村によって申告書様式が異なる場合があります。
市町村民税の申告書は、市区町村役場の課税担当窓口(法人住民税担当)または電子申告(eLTAX)で提出します。電子申告を選択した場合は、e-Taxと連携した一括送信で効率化できます。
添付書類として必要な寄附金受領証の取扱い
法人税の確定申告書には、寄附先の地方公共団体が発行した「寄附金受領証(受領証明書)」を添付することが求められます。また、地方公共団体が発行する企業版ふるさと納税に関する証明書類も必要となる場合があります。受領証が届く前に申告期限が迫る場合は、自治体への早期発行依頼が必要です。
受領証の発行に時間がかかる自治体もあるため、寄附後すぐに発行依頼の連絡を取ることが重要です。申告書の提出期限(通常は事業年度終了後2か月)までに受領証が揃わない場合は、税務署に期限延長申請を行うか、証明書なしで申告して後から補完するかを税理士に相談してください。
企業版ふるさと納税の損金算入を受けるための条件と注意点

損金算入と税額控除の両方を確実に受けるには、制度上の要件を満たしていることを事前に確認する必要があります。見落とすと控除が適用されないリスクがあります。
青色申告法人であることなどの基本要件
企業版ふるさと納税の税額控除を受けられるのは青色申告法人に限られます。白色申告法人は対象外です。また、各事業年度において法人税・住民税・事業税が発生していることが税額控除の前提となります。欠損(赤字)の法人では損金算入の節税効果は生じますが(将来の繰越欠損金の活用によって間接的に恩恵を受けることはあり得る)、税額控除は税額がなければ適用できません。
また、寄附先のプロジェクトが国(内閣府)の認定を受けた地方創生事業であることが必要です。すべての自治体・すべてのプロジェクトが対象ではないため、内閣府のポータルサイト等で認定プロジェクトを確認してください。
さらに、1回あたりの寄附金額が10万円以上であることが要件です。10万円未満の寄附は企業版ふるさと納税の税額控除の対象となりません。複数回に分けて寄附を行う場合も、各回の金額が10万円以上である必要があります。この点は個人版との大きな違いの一つです。
本社所在地への寄附や不交付団体への寄附は対象外
自社の主たる事務所(本社)が所在する都道府県・市区町村への寄附は、制度の対象外となります。また、地方交付税の不交付団体(財政力が高く国からの地方交付税を受け取っていない自治体)への寄附も対象外です。
これらの条件を満たさない自治体への寄附を行った場合、会計上は費用として計上されますが、企業版ふるさと納税としての税額控除は受けられません。一般の法人寄附金として損金算入限度額の適用を受けることになるため、事前の確認が重要です。なお、主たる事務所が所在する都道府県の「市区町村」への寄附は対象外ですが、別の都道府県の市区町村への寄附は対象となります。
決算期末までに払込を完了させる必要性
企業版ふるさと納税の損金算入・税額控除はいずれも「寄附を行った(決済が完了した)事業年度」に適用されます。翌期への繰り越しはできません。したがって、当期での節税を実現したい場合は、決算期末日までに寄附金の振込(決済完了)を完了させる必要があります。
1回あたりの寄附金額は10万円以上が要件です。また、経済的利益の受け取り(返礼品等)は禁止されており、これに違反する寄附は制度上の優遇を受けられません。
企業版ふるさと納税の損金算入をスムーズに進めるポイント

損金算入と税額控除の両方を最大限に活用するには、計画的な準備と適切なパートナーの活用が重要です。
決算期や利益見通しを踏まえた寄附時期の調整
税額控除は各税目の税額を上限とするため、当期の利益・課税所得の見通しが固まった段階で寄附金額を決定することが最適化につながります。期中に仮の試算を行い、決算前の最終見通しをもとに寄附金額を確定するという2段階アプローチが効果的です。
特に年度末(決算期末)に向けては処理期間を考慮した余裕のあるスケジュールが必要です。自治体との調整・申請書類の準備・振込処理まで含めると、少なくとも1〜2か月前から動き始めることが安全です。
寄附先自治体との早期コミュニケーション
企業版ふるさと納税の寄附先プロジェクトは、内閣府が認定した事業に限られます。希望する自治体・プロジェクトが認定を受けているか、受領証明書の発行・送付にかかる期間、追加で必要な手続きがあるかどうかを早めに自治体担当者に確認することで、申告書作成時のトラブルを防ぐことができます。
自治体によっては、寄附の受け付け締切や受領証の発行タイミングが設定されている場合があります。年度末の駆け込み寄附は自治体側の処理が混雑することもあるため、余裕を持ったコミュニケーションが重要です。
専門窓口や支援サービスを活用した手続き効率化
企業版ふるさと納税の手続きは、寄附先プロジェクトの選定・自治体との交渉・書類の収集・申告書への記載まで多岐にわたります。初めて活用する企業や経理担当者のリソースが限られている場合は、寄附先のマッチングから申告書類の準備まで一括してサポートする専門プラットフォームの活用が有効です。
専門サービスを利用することで、適切な寄附先の選定・節税効果のシミュレーション・申告書の記載確認など、手続き上のミスを防ぎながら効率的に制度を活用できます。税理士との連携も含めて、初年度は専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。
まとめ
企業版ふるさと納税では、寄附金全額の損金算入(地方公共団体への寄附として損金算入限度額の制限なし)と、法人税・法人住民税・法人事業税からの税額控除が組み合わさることで、最大約9割の税負担軽減が実現します。
会計処理は寄附時に費用計上し、申告書(法人税・都道府県・市町村)に控除額を記載して受領証を添付することが基本です。決算期・利益見通しを踏まえた計画的な実行と、税理士への事前相談が確実な活用の鍵です。