企業版ふるさと納税に必要な別表とは?種類別の記入手順や提出時の注意点を紹介
企業版ふるさと納税で税額控除を受けるためには、法人税・法人事業税・法人住民税それぞれの申告書に専用の別表(明細書)を添付することが必要です。しかし実務担当者の中には「どの別表を使えばよいか」「各欄にどう記入すればよいか」がわかりにくいと感じる方も多くいます。
この記事では、企業版ふるさと納税で必要な3種類の別表の概要・取得方法・記入手順・提出時の注意点まで実務に役立つ内容を解説します。
企業版ふるさと納税で必要な別表とは

企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の税額控除を申告で適用するには、各税目の申告書に別表(明細書)を添付することが必要です。どの別表が必要かを把握することが申告準備の第一歩です。
別表は税額控除を受けるための明細書
別表とは、法人税や地方税の確定申告書に添付する明細書のことです。法人の課税所得・税額・適用する控除の計算根拠を税目ごとに詳細に記録します。企業版ふるさと納税の税額控除を受けるには、控除額の計算根拠を記した専用の別表を申告書に添付することが法令上求められています。
別表への記載は「どの自治体のどのプロジェクトに何円を寄附したか」「その寄附金額をもとに計算される控除額はいくらか」「控除の上限を超えていないか」を確認・証明するための手続きです。記載漏れや誤記があると、税額控除が適用されないリスクがあります。
企業版ふるさと納税で必要な3種類の別表
企業版ふるさと納税に関連して必要な別表は3種類あります。①法人税申告書の別表6(22)(法人税の税額控除の計算)、②法人県民税・法人事業税の申告書(第7号の3様式等)、③法人市民税の申告書(第20号の5様式等)です。なお、様式番号は都道府県・市区町村によって異なる場合があります。申告先の税務署・都道府県税事務所・市区町村に最新の様式を確認することをおすすめします。
法人税の別表は国税庁が管轄し、e-Taxを通じて電子申告できます。地方税の別表は各都道府県・市区町村が管轄し、eLTAXを通じて申告します。それぞれ管轄・提出先・様式が異なるため、混同しないよう整理して準備することが重要です。
3種類の別表は別々に作成しますが、基礎となる「特定寄附金額」は共通です。法人税の別表から算出した控除額の一部を地方税の様式に転記する連動関係があるため、作成順序は「法人税の別表(別表6(22)等)→地方税の様式」の順で進めるとスムーズです。
別表が必要となる根拠と提出義務
法人税の税額控除(別表6(22)等)は租税特別措置法に基づき、法人住民税・法人事業税の控除は地方税法の附則等に基づきます。企業版ふるさと納税の税額控除を受けるためには、それぞれの法令が定める様式に所要事項を記載した上で、確定申告書に添付することが義務付けられています。
税額控除は申告書に別表を添付して「申告減税」として適用されるものであり、別表なしでは控除が認められません。期限後申告や修正申告での追加適用が認められない場合もあるため、期限内に正確な別表を作成・提出することが不可欠です。
企業版ふるさと納税の別表の取得方法

申告に必要な別表は、国税庁・都道府県・市区町村の各ウェブサイト、または税務申告ソフトから取得できます。最新の様式を使用することが重要です。
法人税の別表6(22)は国税庁のサイトからダウンロード
企業版ふるさと納税の法人税税額控除に関する別表(別表6(22)等)は、国税庁のウェブサイトの「申告書等の様式・手引き」ページから入手できます。様式はPDF形式で公開されており、必要な情報を手書きで記入して紙で提出するか、電子申告(e-Tax)を利用して申告します。
様式は毎年の税制改正に伴って変更される場合があります。前年度に使用した様式をそのまま流用するのではなく、申告年度に対応した最新版を国税庁のサイトから確認・ダウンロードすることが重要です。
地方税の様式は各都道府県・市町村のサイトから取得
法人事業税・法人県民税の申告書(第7号の3様式等)は、本社・事業所が所在する都道府県の税務事務所または都道府県ウェブサイトから取得します。法人市民税の申告書(第20号の5様式等)は、所在する市区町村の課税担当窓口またはウェブサイトから取得します。
地方税の様式は自治体によって若干異なる場合があります。複数の都道府県・市区町村に事業所がある法人は、それぞれの管轄から対応する様式を取得する必要があります。取得前に管轄の税務担当窓口へ「企業版ふるさと納税の税額控除に必要な様式」を確認すると確実です。
会計ソフトや税務申告ソフトでの様式取得
法人税申告書を作成する税務申告ソフト(弥生会計・freee申告・達人シリーズ等)では、企業版ふるさと納税対応の別表が組み込まれている場合があります。ソフト上で寄附金額・自治体名等の情報を入力すると自動計算される機能を持つ製品もあり、手作業でのミスを防ぐ効果があります。
ただし、ソフトの対応状況は製品・バージョンによって異なります。税制改正への対応が最新版になっているか確認し、必要に応じてアップデートを行うことが重要です。ソフトの出力結果と国税庁の様式を照合して内容が一致しているか確認することも推奨されます。
法人税の別表6(22)の記入手順と各欄の解説

別表6(22)は企業版ふるさと納税による法人税の税額控除額を計算する明細書です。記入の流れと主な記載項目を確認します。なお、様式の詳細な記入欄や具体的な番号は国税庁が公開する最新の記載要領を参照してください。
特定寄附金額や税額控除基準額に関する記載項目
まず寄附先の地方公共団体の名称・住所・寄附日・寄附金額を記載します。企業版ふるさと納税の対象となる寄附は「地方創生のまち・ひと・しごと創生寄附活用事業」として認定されたプロジェクトへのものに限られるため、寄附金額は認定プロジェクトへの支出に限定して記載します。
税額控除基準額は「特定寄附金額 × 30%」で計算します。複数の自治体に寄附した場合は合計額をもとに計算します。この段階で計算した税額控除基準額は、次の「当期税額控除可能額」の計算に使います。
調整前法人税額や当期税額控除可能額の計算
企業版ふるさと納税における法人税の税額控除は、法人住民税で寄附額の4割に達しない場合に、その達しない部分について適用されます。ただし、控除できる金額は寄附額の1割を限度とし、法人税額の5%が上限です。
調整前法人税額とは、法人税額の特別控除を適用する前の法人税額をいいます。別表6(22)では、この調整前法人税額などをもとに、法人税から控除できる金額の上限を判定します。
なお、他の税額控除(研究開発費税額控除・雇用促進税制等)と企業版ふるさと納税の税額控除を同一事業年度に複数適用する場合は、適用順序と各控除の限度額管理に注意が必要です。
中小企業者と中小企業者以外で異なる調整項目
別表6(22)では、中小企業者(資本金1億円以下等の法人)と中小企業者以外で記入する調整項目が異なる場合があります。適用される税率区分・他の税額控除との競合による調整(繰越控除の有無等)が中小企業者か否かで変わることがあるためです。
自社が「中小企業者」に該当するかどうかは、法人税法施行令第39条の45等の規定を参照して判定します。一般的には資本金の額が1億円以下の法人が中小企業者に該当しますが、大法人の完全子会社(100%支配)などは除外される場合があります。判定に迷う場合は税理士に確認してください。
住民税額控除額の算出と記入
別表6(22)には、法人税の控除額に加えて住民税の控除額を算出するための記入欄も設けられています。住民税(法人税割)の控除額は「特定寄附金額 × 20%(道府県民税10%+市町村民税10%)」が基準ですが、各税割額の20%という上限があります。
別表6(22)で算出した法人税の当期税額控除可能額と住民税の控除額は、それぞれ対応する税目の申告書に転記します。転記ミスがあると各税目の控除額が正確に適用されないため、転記後に数値が一致しているか確認することが重要です。
法人県民税・法人事業税の第7号の3様式の記入手順

法人事業税および法人県民税(法人税割)の申告では、別表6(22)で算出した内容をもとに都道府県税事務所向けの様式(第7号の3様式等)を作成します。なお、様式番号・様式名称は都道府県によって異なる場合があるため、事前に確認してください。
特定寄附金に関する明細の転記方法
様式には、寄附先の地方公共団体名・特定寄附金額など、税額控除額の計算に必要な事項を記載します。企業版ふるさと納税における法人住民税の税額控除は、寄附額の40%が基準となり、法人住民税法人税割額の20%が上限です。法人県民税・法人事業税の申告では、第7号の3様式等により、都道府県分の法人税割額から控除する金額および法人事業税から控除する金額を計算します。具体的な記入欄や按分・転記方法は、申告先の都道府県の記載要領に従って確認します。
複数事業所がある場合の寄附金額の按分計算
法人事業税・法人県民税は複数の都道府県に事業所がある場合、課税標準を事業所の数・従業員数等に応じて各都道府県に按分(分割計算)する制度があります(分割課税)。企業版ふるさと納税の控除額計算でも、この按分が絡む場合があります。
分割基準(事業所数・従業員数等)は都道府県ごとの申告書に記載します。按分計算を誤ると、各都道府県への申告額が不正確になるため、分割計算の正確な把握が重要です。複数都道府県にまたがる申告を初めて行う場合は税理士のサポートを受けることをおすすめします。
法人事業税の控除額算出と記入欄
法人事業税(所得割)からの控除額は「特定寄附金額 × 40%」が計算上の基準ですが、控除できる金額の上限は「当期の法人事業税額の20%」です。当期の法人事業税額が少ない場合は、この上限によって控除額が大幅に制限されます。
法人事業税の税額控除の上限(20%)は、3税目の中で最も制約が厳しく、特に中小企業では上限に引っかかりやすいです。事前のシミュレーションで実際の法人事業税控除額の見込みを把握したうえで申告書を作成することが安全です。
都民税の場合の特例的な計算欄
東京都の場合、法人住民税(都民税)の計算では都独自の様式・規定が適用されることがあります。都民税は法人税割のみからなる(法人都民税は道府県民税と市町村民税が一本化されている)など、他の道府県とは制度上の違いがあるため、東京都税事務所への申告では都の様式と手引きに従って処理することが必要です。
法人市民税の第20号の5様式の記入手順

法人市民税(法人税割)の申告では、市区町村向けの様式(第20号の5様式等)に企業版ふるさと納税の控除額を記載します。様式名称・番号は市区町村によって異なる場合があります。
特定寄附金に関する明細の記載項目
市区町村の申告書には、寄附先の地方公共団体名・特定寄附金額・税額控除基準額を記載します。市町村民税法人税割からの控除額は「特定寄附金額 × 10%(市町村民税法人税割分)」が計算の出発点です。都道府県と市区町村にそれぞれ10%ずつで合計20%が法人住民税の控除額となります。
法人市民税の申告書は本社所在地の市区町村だけでなく、事業所が所在するすべての市区町村に対して申告します。それぞれの市区町村で控除額の計算と申告書への記載が必要です。
市町村ごとの按分計算と控除額の算出
複数の市区町村に事業所がある法人では、法人市民税も按分課税が適用されます。各市区町村への課税標準(法人税割の課税ベース)は、従業員数等の基準で按分して算出します。
按分後の課税標準に応じて各市区町村への法人市民税額が決まり、そこから企業版ふるさと納税の控除額(上限: 各市区町村の法人税割の20%)を差し引きます。市区町村ごとの控除額の上限が異なるため、各申告書で別途計算することが必要です。
控除対象法人税割額と税額控除上限額の記入
市町村の申告書には「控除対象法人税割額」(控除を適用する前の市町村民税法人税割額)と「税額控除上限額」(控除対象法人税割額の20%)を記入します。「特定寄附金額 × 10%」と「税額控除上限額」を比較して小さい方が実際の控除額となります。
市区町村への申告書は、都道府県への申告書と様式・内容が異なります。都道府県向けの様式と混同しないよう、各自治体から正しい様式を取得して使用してください。
企業版ふるさと納税の別表作成で起こりやすいミスと対処

実務で別表を作成する際には、さまざまなミスが起こりやすいです。あらかじめ典型的なミスを把握しておくことで、申告前のチェック精度が高まります。
寄附金額の転記ミスと計算端数の処理誤り
別表の各欄に寄附金額や計算結果を転記する際に、数字の桁や金額を誤って記入するケースがあります。特に複数の自治体への寄附がある場合、各自治体ごとの明細と合計額の整合性を確認することが重要です。
税額控除額の計算では1円未満の端数が生じることがあります。端数処理のルール(切り捨て・切り上げ)を各様式の記載要領で確認し、一貫した処理を行ってください。
控除上限額の判定で起こる適用要件の見落とし
税額控除には「法人住民税法人税割額の20%」「法人税額の5%」「法人事業税額の20%」という各税目の上限があります。なお、法人税からの控除は、法人住民税で寄附額の40%に達しない場合の残額について適用されるもので、寄附額の10%も限度とされます。これらを確認せずに計算上の控除額をそのまま申告書に記載してしまうと、実際の上限を超えた過大な控除が適用されるリスクがあります。
また、「青色申告法人であること」や「自社の主たる事務所が所在する都道府県・市区町村への寄附ではないこと」「地方交付税不交付団体への寄附ではないこと」などの適用要件も再確認してください。
複数自治体への寄附時の按分計算の混乱
複数の都道府県・市区町村に分割課税が適用される法人が複数の自治体に寄附した場合、按分計算と控除計算が複雑に絡み合います。各自治体への申告書で使う控除額の合計が、全体の特定寄附金額をもとに計算した合計控除額と整合するかを確認することが重要です。
受領書の添付漏れや日付の不整合
地方税の申告書には受領書(寄附金受領証)の写しを添付することが一般的に求められます。受領書を入手する前に申告書を提出すると添付漏れとなります。また、受領書の日付が「事業年度内」であることも確認が必要です。事業年度外の寄附は当期の控除対象になりません。
特に年度末ギリギリに寄附を行った場合、受領書の発行が翌期になってしまうことがあります。寄附直後に自治体に受領書の早期発行を依頼し、申告期限前に必ず入手できるよう段取りをつけてください。
企業版ふるさと納税の別表提出時の注意点と添付書類

申告書の提出にあたっては、各税目で異なる添付書類の扱い・申告方法・期限を把握することが必要です。
法人税では受領書は添付不要だが保存義務がある
法人税の確定申告書(別表6(22)等)を提出する際、企業版ふるさと納税の寄附金受領書は原則として申告書への添付が不要とされています。ただし、税務調査の際に証拠書類として提示を求められる場合があるため、受領書は申告書提出後も適切に保存することが必要です(原則7年間)。
受領書は自治体から郵送されるため、受領後すぐに申告書類フォルダに一緒に保管する習慣をつけることをおすすめします。電子データとして届いた場合は、PDF等で適切に保存してください。
地方税の様式には受領書の写しを必ず添付
法人事業税・法人住民税の申告書(都道府県・市区町村向け)には、受領書の写しを添付することが求められるのが一般的です。受領書の写しが添付されていない場合、税額控除が認められない可能性があります。
受領書の発行に自治体側の処理時間がかかることがあります。申告期限が近い時期に駆け込みで寄附を行った場合、受領書が申告期限までに届かないリスクがあります。寄附後速やかに受領書の発行を依頼し、届いていない場合は自治体に催促することが重要です。
e-TaxやeLTAXを使った電子申告での別表の取扱い
法人税はe-Tax(国税電子申告・納税システム)、地方税はeLTAX(地方税ポータルシステム)を使って電子申告できます。電子申告の場合、別表はXML形式のデータとして送信します。税務申告ソフトが対応している場合は、申告書データを自動でe-TaxやeLTAXに連携できます。
電子申告では添付書類(受領書等)の扱いがシステムによって異なります。一部は電子データとして送信できますが、対応していない書類については紙で別途提出が必要な場合もあります。電子申告の詳細な手順は、利用している申告ソフトのマニュアルやe-Tax・eLTAXの公式手引きで確認してください。
法人税申告期限と地方税申告期限の違いに注意
法人税の確定申告期限は事業年度終了後2か月以内が原則です(申告期限延長の承認を受けた場合を除く)。地方税(法人事業税・法人住民税)の申告期限も原則として同じ2か月以内ですが、申告期限延長の手続きや法人税申告期限との連動の仕組みが一部異なります。
期限内に3種類すべての別表を揃えて提出することが、確実に税額控除の適用を受けるための大前提です。年度末に受領書の入手が遅れると、申告期限に間に合わない可能性があります。余裕を持った寄附スケジュールの設計と、受領書の早期入手依頼を心がけましょう。
なお、法人税と地方税の申告期限が異なる場合(法人税は延長申請したが地方税は未申請の場合等)、それぞれの期限を個別に管理することが重要です。申告スケジュールを表形式で管理し、担当者間で共有することで期限管理の漏れを防げます。
まとめ
企業版ふるさと納税の税額控除を受けるには、法人税の別表6(22)・法人事業税および法人県民税の申告書(第7号の3様式等)・法人市民税の申告書(第20号の5様式等)の3種類の別表が必要です。
各別表の取得先・記入内容・添付書類の扱いを正確に理解し、申告期限に余裕を持って準備することが大切です。複数の都道府県・市区町村に申告が必要な場合や初めての申告の場合は、税理士のサポートを受けることをおすすめします。