企業版ふるさと納税の対象外となる自治体は?東京都・不交付団体・本社所在地のルールを解説
企業版ふるさと納税は、損金算入と税額控除により、最大で寄附額の約9割の税負担が軽減される制度です。ただし、すべての自治体に寄附できるわけではありません。東京都や一部の不交付団体、そして自社の本社が所在する自治体は対象外とされています。
本記事では、内閣府の資料やQ&Aをもとに、対象外となる自治体の3つの類型と判断のルール、寄附先の探し方までをわかりやすく解説します。寄附先選びの参考にしてください。
企業版ふるさと納税で寄附できない自治体の3つの類型

内閣府の制度概要資料では、企業版ふるさと納税の対象外となる地方公共団体が示されています。大きく分けると、東京都、一部の不交付団体の市区町村、寄附企業の本社が所在する自治体の3つです。順に見ていきましょう。
普通交付税の不交付団体である東京都
1つ目は東京都です。内閣府のQ&A〈認定申請編〉では、普通交付税の不交付団体である都道府県は、寄附の受け皿となる事業を記載した地域再生計画を申請できないとされています。不交付団体とは、税収などの財源が十分にあり、国から普通交付税を受け取っていない自治体のことです。
東京都の発表によると、東京都は昭和29年度の交付税制度発足以来、不交付団体であり続けています。総務省の令和7年度の算定結果でも、都道府県の不交付団体は東京都の1団体のみです。
なお、普通交付税の算定では、東京都と23区をあわせて1つの自治体とみなします。内閣府の令和2年度の資料でも、対象外の団体として23特別区が挙げられていました。一方で、八王子市や町田市など東京都内の市町村の中には、地域再生計画の認定を受けて寄附を募集している団体もあります。
東京都内だからといって、一律に寄附できないわけではない点に注意しましょう。
不交付団体かつ全域が地方拠点強化税制の支援対象外地域の市区町村
2つ目は、市区町村のうち一定の条件を満たす団体です。Q&A〈認定申請編〉では、普通交付税の不交付団体であって、その全域が地方拠点強化税制の支援対象外地域とされている市町村は申請できないとされています。
つまり、不交付団体であることと、全域が支援対象外地域であることの2つの条件を両方満たす場合に限り、対象外となります。どちらか一方だけに当てはまる団体であれば、対象外にはなりません。
支援対象外地域とは、首都圏整備法で定める既成市街地・近郊整備地帯や、近畿圏整備法で定める既成都市区域などを指します。内閣府の制度概要資料では、これを「三大都市圏の既成市街地等」と表現しています。
具体例として、内閣府の令和2年度の資料では、東京都の武蔵野市や三鷹市、神奈川県の川崎市、千葉県の浦安市など26市町と23特別区が対象外として示されていました。いずれも首都圏に所在する団体です。ただし、不交付団体は年度ごとに変わるため、最新の状況は個別に確認が必要です。
寄附企業の本社が所在する自治体
3つ目は、寄附する企業の本社が所在する自治体です。これは自治体側の財政状況や地域で決まる条件ではなく、寄附企業との関係で決まるルールです。そのため、ある企業にとっては対象外の自治体でも、別の企業にとっては対象になることがあります。
内閣府の制度概要資料にも「本社が所在する地方公共団体への寄附は対象外」と明記されています。
内閣府の令和2年度の資料では、本社所在地への寄附は企業版ふるさと納税の対象外となり、損金算入のみの扱いになると説明されています。つまり、寄附そのものはできても、税額控除による軽減効果は受けられません。
地元への貢献として本社のある自治体に寄附したいと考える企業は多いものの、企業版ふるさと納税としては扱われない点を理解しておきましょう。本社所在地以外の自治体を選べば、同じような事業でも税額控除を受けられる可能性があります。
市町村と都道府県で判定の単位が異なるなど、詳しい考え方は後ほど解説します。
不交付団体=すべて対象外ではない理由

「不交付団体には寄附できない」と説明されることがありますが、正確ではありません。都道府県と異なり、市区町村の場合は地方拠点強化税制の支援対象外地域かどうかもあわせて判断されるためです。
地方拠点強化税制の支援対象外地域とは
地方拠点強化税制とは、企業が本社機能を地方に移転したり、地方で拡充したりする際に税制上の支援を受けられる制度です。対象となる施設は事務所や研究所、研修所などで、地域再生計画に記載された地域で整備することが前提です。
企業版ふるさと納税とは別の制度ですが、対象外の判定にこの税制の区域が使われています。
この税制には、東京23区から地方へ移転する移転型と、地方の拠点を拡充する拡充型があります。Q&A〈認定申請編〉で示されている支援対象外地域は、拡充型事業に係る支援対象外地域です。具体的には、首都圏整備法の既成市街地・近郊整備地帯や、近畿圏整備法の既成都市区域などが該当します。
不交付団体であっても、区域の一部が支援対象外地域から外れていれば、企業版ふるさと納税の対象外にはなりません。内閣府の地方拠点強化税制のページでは、対象外地域の詳細資料も公開されています。
不交付団体かどうかは前年度の交付状況で判断
不交付団体かどうかの判断時点についても、Q&A〈認定申請編〉に記載があります。寄附の受け皿となる事業を実施しようとする年度の前年度において、普通交付税の交付を受けているかどうかで判断するとされています。寄附をする年度の交付状況ではない点に注意が必要です。
寄附を検討する際は、事業の実施年度と、その前年度の交付状況をセットで確認しましょう。
たとえば、令和9年度に実施する事業であれば、令和8年度の交付状況が判断の基準になります。東京都が2026年7月に公表した令和8年度の算定結果では、都内の市町村のうち不交付団体は立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、調布市、小金井市、国分寺市、国立市、多摩市、瑞穂町の10団体です。
全国の不交付団体は、総務省が公表する普通交付税の算定結果で確認できます。不交付団体の顔ぶれは税収の状況などによって入れ替わるため、過去の情報をそのまま当てはめないようにしましょう。
認定後に不交付団体になった場合の扱い
複数年の地域再生計画で認定を受けた後に、自治体が不交付団体になるケースもあります。Q&A〈事業実施・実施状況報告編〉では、認定後に不交付団体となり認定基準を満たさなくなった場合には、当該年度以降の事業実施期間を削る等の変更認定申請が必要になるとされています。
認定を受けた時点で対象だったからといって、計画期間の最後まで対象であり続けるとは限りません。
そのため、複数年にわたって同じ自治体へ寄附を予定している企業は、途中で対象から外れる可能性もあることを念頭に置いておきましょう。変更認定によって事業実施期間が短くなれば、予定していた年度に寄附できなくなることも考えられます。
寄附のたびに、その年度の認定状況を自治体に確認しておくと安心です。
本社所在地ルールの考え方

本社所在地のルールは、自治体ではなく寄附企業ごとに対象外の範囲が変わる点が特徴です。ここでは、Q&A〈事業実施・実施状況報告編〉をもとに、「本社」の意味と判定の考え方を整理します。
「本社」とは地方税法上の主たる事務所・事業所
Q&A〈事業実施・実施状況報告編〉では、事業を実施する地方公共団体内に本社が所在する法人からの寄附には、地方創生応援税制の適用はないとされています。地方創生応援税制は、企業版ふるさと納税の制度上の名称です。
対象外となる範囲を正しく把握するには、まず「本社」が何を指すのかを理解しておく必要があります。
ここでいう「本社の立地する地方公共団体」とは、地方税法における「主たる事務所又は事業所が所在する地方公共団体」を指すとされています。社内で本社と呼んでいる拠点が別にあったり、本社機能を移転したりした場合は、判断に迷うこともあるでしょう。
自社の主たる事務所又は事業所がどこにあたるのかを、税理士や寄附先の自治体と事前に確認しておくことが大切です。複数の拠点を持つ企業や、本社の移転を予定している企業は特に注意しましょう。また、Q&Aでは、地方創生応援税制の対象となるのは青色申告書を提出している法人とされています。
市町村の事業と都道府県の事業で異なる判定単位
本社所在地の判定単位は、事業を実施する主体によって異なります。Q&A〈事業実施・実施状況報告編〉によると、事業実施主体が市町村の場合は市町村単位、都道府県の場合は都道府県単位で本社所在地を判断します。
X県A市に本社がある企業を例に考えてみましょう。A市が実施する事業への寄附は対象外ですが、同じX県内のB市が実施する事業への寄附は対象になります。一方で、X県が実施する事業の場合は県単位で判断されるため、県内に本社がある企業からの寄附はすべて対象外です。
つまり、A市に本社がある企業は、A市とX県の両方が対象外となります。地元の県が実施する事業への寄附を検討している場合は、特に注意が必要です。もちろん、X県以外の都道府県やその県内の市町村であれば、本社所在地のルールによって対象外になることはありません。
同じ県内の自治体を寄附先として検討する際は、事業の実施主体が市町村なのか都道府県なのかを必ず確認しましょう。
支店・工場がある自治体の扱いは事前確認を
対象外となるのは、あくまで本社が所在する自治体です。たとえば大阪府八尾市の案内では、本社が市外であれば、支店等が市内にあっても対象になると説明されています。工場や営業所がある地域へ寄附し、事業を通じて地域とのつながりを深めたいと考える企業もあるでしょう。
従業員が暮らす地域への貢献は、社内の理解も得やすい選択肢といえます。
ただし、内閣府のQ&Aには支店や工場について個別の記載はありません。自社の拠点がある自治体への寄附を検討する場合は、事前に自治体の担当窓口に確認しておくと安心です。あわせて、後述する経済的な見返りの禁止に抵触しないかも確認しておきましょう。
自治体だけでなく「事業」が対象外になるケース

寄附先の自治体が対象であっても、寄附を充てる事業や寄附の条件によっては、企業版ふるさと納税の対象になりません。事業面で注意したいポイントを解説しますので、寄附の前に必ず確認しておきましょう。
地域再生計画の認定を受けていない事業
企業版ふるさと納税の寄附先は、自治体そのものではなく、国の認定を受けた地域再生計画に記載された事業です。自治体は地方版総合戦略に基づいて地域再生計画を作成し、内閣府の認定を受ける必要があります。そのため、認定を受けていない事業への寄附は企業版ふるさと納税の対象になりません。
寄附を検討している自治体であっても、目的の事業が計画に含まれているとは限らない点に注意しましょう。
Q&A〈事業実施・実施状況報告編〉でも、法人からの寄附は地域再生計画の認定後であれば受領が可能とされています。認定申請は原則として年3回、毎年度5月、9月、1月を目途に行われます。認定前の事業に寄附したい場合は、認定のスケジュールも自治体に確認しておきましょう。
また、既存の住民サービスとして行ってきた事業は、寄附を契機として質的又は量的な変化があると明確に説明できる場合に対象となり得るとされています。
認定前に着手した事業・事業費を超える寄附
Q&A〈認定申請編〉では、原則として着手済みの事業は対象にならないとされています。ここでいう着手済みとは、地域再生計画の認定前に支出負担行為を行ったものを指します。支出負担行為とは、契約の締結など、自治体が支出の原因となる行為をすることです。
例外的な扱いが認められる余地はありますが、内閣府への個別相談が前提です。
また、寄附の総額は事業費を超えないように管理する必要があります。事業費を超えて寄附を受領した場合には、認定が取り消されるなど自治体にとって不利益が生じるおそれがあります。事業費が確定する前は、地域再生計画に記載された寄附の金額の目安の範囲内で受領することとされています。
寄附額は1回あたり10万円以上が対象です。大きな金額を予定している場合は、事業費との兼ね合いを事前に自治体と相談しておきましょう。
経済的な見返りを伴う寄附は認められない
企業版ふるさと納税では、寄附企業への経済的な見返りが禁止されています。Q&A〈事業実施・実施状況報告編〉では、商品券など換金性の高い商品の提供や、寄附を公共事業の入札参加要件とすること、事業で整備した施設を専属的に利用させることなどが例として挙げられています。
一方で、自治体のホームページや広報誌での企業名の紹介、感謝状の贈呈などは認められています。また、公正なプロセスを経た契約であれば、寄附企業が自治体と取引することも可能とされています。
個人のふるさと納税のように返礼品を受け取る仕組みではないため、経済的な見返りを伴う寄附は認められないことを正しく理解しておきましょう。
関連ページ:
企業版ふるさと納税の禁止事項とは?経済的利益の提供禁止の範囲と違反時のリスクを解説
寄附できる自治体・事業の確認方法

ここまでのルールを踏まえると、寄附先は自治体ごと、事業ごとに確認する必要があります。公的な情報源を中心に確認するのが基本です。ここでは、寄附できる自治体や事業を探す具体的な方法を紹介します。
内閣府ポータルの寄付募集事業一覧で探す
寄附先を探す際にまず活用したいのが、内閣府の「企業版ふるさと納税ポータルサイト」です。トップページには「地域別」と「分野別の寄附募集事業一覧」という2つの入口があります。
「地域別」では、都道府県ごとに企業版ふるさと納税の対象事業が掲載されています。各ページでは、地方公共団体名や計画名、分野別の寄附募集事業名、担当部署、連絡先などを確認できます。
「分野別の寄附募集事業一覧」では、子育てや観光・交流、防災対策・復興支援など25の分野から寄附募集事業を探せます。自社の事業や関心のある社会課題に近い分野から探すと、寄附先を絞り込みやすくなるでしょう。
ポータルサイトには、対象事業の認定に関する資料や制度概要、Q&Aもまとめて掲載されています。気になる事業が見つかったら、計画名から事業の内容も確認しておきましょう。なお、一覧の情報だけでは、寄附の受付状況まではわからない場合があります。
関連ページ:
企業版ふるさと納税の公式情報は内閣府のポータルサイトにある!確認すべき情報も紹介
自治体の担当窓口に直接問い合わせる
寄附したい自治体の候補が決まったら、担当窓口に直接問い合わせるのが確実です。担当部署や連絡先は、ポータルサイトの地域別ページや自治体のホームページで確認できます。自治体によっては、企業版ふるさと納税の専用ページで寄附の流れや対象事業を案内している場合もあります。
問い合わせの際は、事業が認定済みかどうか、寄附を受け付けられる時期や金額の目安、必要な書類などを確認しておきましょう。自社の本社所在地を伝えたうえで、対象になるかどうかを確認しておくと、後から対象外だったと判明するリスクを減らせます。
寄附の使い道や事業の進捗についても聞いておくと、社内への説明に役立ちます。
寄附前に確認したいチェックリスト
寄附を実行する前に、次のポイントを確認しておきましょう。対象外の判定に関わる項目と、事業や寄附の条件に関わる項目に分けて考えると整理しやすくなります。1つ目は、寄附先が東京都や、不交付団体かつ全域が支援対象外地域の市区町村ではないかです。
2つ目は、自社の本社が寄附先の市町村内にないか、都道府県の事業であれば県内にないかです。
3つ目は、寄附を充てる事業が地域再生計画の認定を受けているかどうかです。4つ目は、寄附額が1回あたり10万円以上で、事業費の範囲内に収まるかどうかです。5つ目は、寄附と引き換えに経済的な見返りを求めていないかです。6つ目は、自社が青色申告書を提出している法人かどうかです。
これらを一つずつ確認しておけば、対象外となるリスクを大きく減らせます。社内の稟議資料にチェック結果を残しておくのもおすすめです。
寄附先選びに迷ったら専門プラットフォームに相談を

対象外のルールを踏まえて寄附先を選ぶのは、慣れていない担当者にとって負担になりがちです。迷ったときは、外部の専門サービスを活用するのも一つの方法です。
対象外の自治体・事業を避けて寄附先を選ぶポイント
寄附先を選ぶ際は、まず本社所在地の市町村と都道府県を候補から外し、対象外の範囲を明確にしておきましょう。そのうえで、認定済みの事業の中から、自社の事業内容やCSRの方針と結びつく分野を選ぶのがおすすめです。
事業の目的や成果指標を確認し、自社が応援したい取り組みと一致しているかを見極めることも大切です。地方創生への貢献を社外に発信したい場合は、自治体による企業名の紹介が受けられるかも確認しておくとよいでしょう。
また、創業の地や支店・工場がある地域など、自社とゆかりのある地域を選ぶと、社内外への説明もしやすくなります。複数の候補を比較し、寄附の目的に最も合う事業を選びましょう。不交付団体の状況や認定状況は年度によって変わるため、寄附の直前にもう一度確認する習慣をつけておくと安心です。
手続きのサポートから寄附先のマッチングまで
初めて企業版ふるさと納税を活用する企業にとっては、対象外のルールの確認や自治体とのやり取りが大きな負担になることもあります。特に、本社所在地や不交付団体の確認、認定状況の把握などを自社だけで行うのは手間がかかります。
対象外の判定を誤ると、税額控除による軽減効果が受けられなくなるおそれもあります。企業版ふるさと納税の専門プラットフォームでは、手続きのサポートから寄附先のマッチングまで一括して対応してもらえます。
自社の希望に合った寄附先の提案を受けられるため、担当者の工数削減と手続きミスの防止につながります。寄附先の選定に時間をかけられない企業や、社内に制度に詳しい担当者がいない企業にとって、心強い存在といえます。
無料で相談できるサービスもあるため、寄附先選びに迷ったときは気軽に相談してみるとよいでしょう。
まとめ
企業版ふるさと納税の対象外となる自治体は、東京都、不交付団体かつ全域が支援対象外地域の市区町村、本社が所在する自治体の3つです。不交付団体でもすべてが対象外になるわけではなく、前年度の交付状況で判断されます。
また、認定を受けていない事業など、事業面でも対象外になるケースがあります。不交付団体の状況や認定状況は年度ごとに変わるため、ポータルサイトや自治体の窓口、専門プラットフォームを活用して、確実に対象となる寄附先を選びましょう。