企業版ふるさと納税で物納はできる?活用するメリットや事例を紹介
企業版ふるさと納税では、現金の寄附だけでなく「物納(物品寄附)」も可能です。自社の資産を有効活用しながら、地域のニーズに応じた支援ができる新たな手段として注目されています。
この記事では、物納の仕組みや活用メリット、実際の企業による寄附事例まで詳しく解説します。地域への貢献と企業価値向上を両立する、新しい寄附のかたちに注目しましょう。
企業版ふるさと納税で物納(物品寄附)はできる?

企業版ふるさと納税は、地域の振興や発展を支援するために、企業が地域に対して寄附を行うことができる制度です。令和7年度の税制改正では、適用期限が令和9年度まで延長されることも発表されています。
企業版ふるさと納税を行うには、寄附額の下限が10万円であることや、寄附額は事業費の範囲内とすることなどいくつかのポイントがありますが、中でも特徴の一つに、現金だけでなく「物納」、つまり物品を寄附することも可能である点が挙げられます。
物納寄附の仕組みは、企業が自社の製品や資産を地域に寄附することで、地域の特性や必要に応じた支援を実現するものです。寄附した物品の価額が寄附金額となり、現金寄附と同様に税額軽減控除を受けることができます。また、物納寄附は企業の社会的責任(CSR)を果たす一環としても位置付けられ、地域とのつながりを深めることができます。
物納寄附は、単なる寄附行為にとどまらず、地域との関係を強化し、企業価値を高める重要な手段となっています。まずは寄附を行う自治体を検討し、物品の受け入れが可能か確認しましょう。
参考:内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生2.0「企業版ふるさと納税」
企業版ふるさと納税で物納を活用する3つのメリット

企業版ふるさと納税における物納は、企業が自社の資産を地域に寄附する新しい形態の寄附方法です。この物納を活用することで、企業はさまざまなメリットを享受できます。
ここでは、その中でも特に重要な3つのメリットについて詳しく解説します。
資産を有効活用しながら地域貢献できる
企業版ふるさと納税における物納は、企業が保有する資産を地域貢献に活用する新しい手段として注目されています。
現金寄附に比べて、物納寄附は企業が保有する資産を有効に活用して地域に貢献することが可能です。例えば、使われていない機器を寄附することで、自治体のニーズに応じた支援が実現します。
このような物納は、企業にとってもメリットがあります。資産を現金化する手間やコストを省くことができ、手元の現預金を自社の事業投資や運転資金に残しながら、地域に貢献することができます。寄附した物品が地域でどのように活用されるかを直接確認できるため、企業の社会的責任(CSR)を果たす一環としての意義も大きくなります。
さらに、物納を通じて地域貢献を行うことで、企業のブランドイメージ向上にも寄与します。地域の人々にとって、企業が自らの資産を地域のために役立てる姿勢は、信頼感を生む要素ともなります。
欲しいものを届けられるため自治体に喜ばれる支援ができる
企業版ふるさと納税における物納の大きな魅力の一つは、自治体のニーズに応じた具体的な支援が可能である点です。
現金の寄附ではなく、実際に自治体が必要としている物品を提供することで、より直接的な貢献が実現します。例えば、地域の学校や福祉施設が求める教材や医療品、生活必需品などを物納することで、地域の人々にとって本当に役立つ支援が行えるのです。
なお、物納を検討する際は、企業が寄附したい物品と自治体が求める物品が合致するか確認できるとよりスムーズです。地域の特性や課題を把握しておくとより喜ばれる、双方にとって意義のある物納となります。
地域との関係を強化できるため企業のイメージを高められる
企業版ふるさと納税を通じて物納を行うことは、地域に根ざした企業としての姿勢を示すことにもつながります。
例えば、必要とされる物品を寄附することで、地域の発展に寄与するだけでなく、企業自身も地域に密着した存在として認識されます。このような取り組みは、地域との関係を強化し、企業のブランド価値を高める要因となります。
また、地域との良好な関係は、企業のCSR(企業の社会的責任)活動の一環としても評価されます。地域貢献を通じて得られるポジティブなイメージは、顧客や取引先に対しても良い影響を与え、結果としてビジネスの成長にも寄与するでしょう。
物納の注意点
多くのメリットがある物納ですが、現金寄附に比べて実務上のハードルや注意すべきポイントがいくつか存在します。「想定外のことが起きてしまった」とならないように、あらかじめ注意点も把握しておきましょう。
自治体のニーズや受け入れ体制によっては物納できない
まず、どんな物品でも自由に寄附できるわけではありません。物品によっては必要としていない自治体もあります。
また、現金寄附の受け入れは行っているものの、物納寄附については受け入れておらず辞退せざるを得ないという自治体もあるため、事前に確認が必要です。
さらに、物品による寄附の場合は、現金寄附の場合と異なり、予算・決算上「翌年度へ繰り越し」をすることが原則できません。
そのため、自治体側が「その寄附年度内に活用(消費)できる分」に限って受領するというルールがある点に注意が必要です。
発送費や配送手配などの負担が発生する
物品を自治体に納品するための物流コストや手配の工数は、企業側の負担となります。
寄附する物品の規模や数量が大きかったり、寄附先の自治体が遠方であったりする場合、発送費や配送手配、現地での設置・組み立てに伴う調整などの負担が想定以上に膨らむ可能性があります。
物品そのものの価値だけでなく、最終的に納品が完了するまでに発生する諸経費や、社内の関係部署との調整工数もあらかじめシミュレーションに組み込んでおく必要があります。
なお、役務(サービス提供)も物納の対象外となるので注意が必要です。
企業版ふるさと納税による物納のジチタイリンクが支援した事例

ジチタイリンクが支援した事例をご紹介します。
EV自動車を物納し、公用車として活用|株式会社ネクステージ

株式会社ネクステージは、企業版ふるさと納税を通じてEV自動車を物納し、自治体の公用車として活用いただく取り組みを行っています。
自治体にとって公用車の買い替えは、車両取得にかかるコストの大きさから予算化のハードルが高く、老朽化が進んでいても更新が後回しになりがちな課題のひとつです。
特にEV車両は環境負荷の低減という観点から導入意向は高いものの、初期費用の高さがネックとなり、検討段階で止まってしまうケースが少なくありません。
そうした背景もあり、ネクステージによるEV自動車の物納は多くの自治体から高い関心を集めました。この寄附により、自治体は予算を他の重要施策に回すことが可能になり、企業側は次世代モビリティの普及に貢献したという実績を構築できました。
災害備蓄用品を物納し、災害への蓄えを強化|株式会社ルミカ

株式会社ルミカは、企業版ふるさと納税を通じて災害備蓄用ライトを物納し、自治体の災害備蓄品の強化に貢献しています。
ルミカが提供するライトは電池や火を使わない使い切りタイプで、保管中のメンテナンスが不要なうえ、いざという時にすぐ使えるという防災備蓄品として理想的な特性を備えています。
災害備蓄用品は、自治体の規模を問わずすべての地域で一定量の備蓄、かつ使用期限に合わせた定期的な買い替えが必要なカテゴリーです。加えて、近年の自然災害の頻発化を背景に、防災備蓄の充実に対する自治体の危機感と関心は高まっています。
こうした状況のなか、ルミカによる災害備蓄用ライトの物納は、自治体から非常に高い関心を集めました。物納が地域の安全・安心に直接貢献できることを示す好例となっています。
骨伝導集音器を物納し、円滑な対話支援に活用|ムトウ

ムトウは、企業版ふるさと納税を通じて骨伝導集音器を物納し、地域社会における対話支援に貢献しています。この集音器は、特に聴覚に障害を持つ方々にとって、周囲の音をクリアに聞き取るための重要なツールです。
ムトウは、地域の福祉施設や役場窓口に対してこの集音器を寄附することで、コミュニケーションの円滑化を図り、より多くの人々が社会参加できる環境を整えることを目指しています。
さらに、株式会社ジチタイリンクがこの寄附をサポートすることで、物納のプロセスがスムーズに進行しました。ジチタイリンクは、地域のニーズに応じた適切な物品を選定し、寄附先との調整を行う役割を果たしています。
このような協力体制により、ムトウの寄附はより効果的に地域に届き、実際に利用されることで、地域の人々に喜ばれています。
参考:PRTIMES「ジチタイリンク、企業版ふるさと納税(物納)による寄附をサポート~株式会社ムトウより山梨県道志村に「骨伝導集音器」を寄附~」
その他の企業・自治体による物納の企業版ふるさと納税活用事例
モバイル建築を物納し、社会的備蓄として活用|一条工務店
一条工務店は、企業版ふるさと納税を通じてモバイル建築を物納し、地域社会の防災力向上に寄与しています。モバイル建築とは、災害時に迅速に設置できる仮設住宅や避難所のことで、特に自然災害が多い日本において、その重要性は増しています。
2023年9月現在、企業版ふるさと納税を活用したモバイル建築の備蓄は11の地方公共団体に対し、135基の施設・ユニットが整備されています。
また、備蓄数をさらに増やすため、社会福祉団体や福祉事業者に対して、同施設の備蓄や児童・高齢者福祉施設での平時利用を積極的に提案する予定です。
一条工務店の取り組みは、企業の社会的責任を果たすだけでなく、地域との信頼関係を深めることにもつながっています。
参考:内閣官房「企業版ふるさと納税(物納)を活用したモバイルームの社会的備蓄」
防災資機材を物納し、広域災害への蓄えを強化|大塚商会
大塚商会は、企業版ふるさと納税を通じて防災資機材を物納することで、地域の災害対策を強化しています。
日本は地震や台風などの自然災害が多発する国であり、地域ごとに異なるリスクに対応するための備えが求められています。大塚商会は防災関連商品を寄附することで、地域の防災力向上に寄与しています。
大塚商会の取り組みは、地域との連携を深めるだけでなく、企業の社会的責任(CSR)を果たす一環としても評価されています。地域住民にとっても、実際に役立つ物資が提供されることで、安心感が生まれ、企業の信頼性が高まる結果となります。
参考:宇和島市「宇和島市における企業版ふるさと納税について」
まとめ
企業版ふるさと納税における物納(物品寄附)は、地域貢献と企業の資産活用を両立させる新しい寄附の形として注目されています。
現金寄附だけでなく、自社の資産や製品を地域に提供することで、自治体のニーズに応じた支援が可能となります。これにより、企業は保有資産を有効活用しながら地域社会に貢献し、同時に企業イメージの向上にもつながるのです。
手元の現金を大きく動かすことなく最大約9割の税額軽減控除を受けられる税制優遇に加え、自社商品のPRや自治体との関係構築の可能性など、企業にとって多角的なメリットをもたらします。
実際に物納を活用している企業の事例を通じて、その効果や地域への影響を具体的に理解することができたのではないでしょうか。今後も企業版ふるさと納税を通じた物納の取り組みが広がることで、地域社会と企業の関係がより深まることが期待されます。

企業版ふるさと納税事業部 官民連携課
長崎県諫早市出身。自治体に特化したサービスを展開する株式会社ホープ(ジチタイリンクの親会社)へ新卒入社。広告事業に約5年間従事した後、当時新規事業として発足した企業版ふるさと納税事業部へ異動し、民間企業の企業版ふるさと納税制度の活用を支援している。企業版ふるさと納税を活用した自治体と民間企業のマッチング、官民連携支援を得意とする。