経営者のふるさと納税術!個人と法人の賢い使い分け方とは?
会社経営者は、個人としてのふるさと納税に加え、法人として活用できる「企業版ふるさと納税」も選択肢となります。役員報酬や法人税との関係を理解せずに寄付すると、期待した効果が得られない場合もあります。
本記事では、経営者が押さえるべき個人版と企業版の違いや、賢い使い分け方、注意点を解説します。
経営者は個人と法人の2つのふるさと納税が可能
経営者は、立場に応じて「個人版」と「企業版」の2つのふるさと納税制度を活用することができます。個人として行うふるさと納税は、役員報酬やその他の所得状況に応じて寄付額の上限が決まり、税の使い道を選ぶ手段の一つとして利用されています。
一方、法人が行う「企業版ふるさと納税」は、地方創生に資する事業に対して寄付を行う制度で、一定の要件を満たした場合、寄付額に応じた税額控除が受けられる仕組みです。返礼品の提供はありませんが、企業の社会貢献活動として位置づけやすい特徴があります。
経営者は個人と法人それぞれの制度の違いを理解したうえで使い分けることで、自身や企業の状況に合った形で地域と関わることが可能になります。
【個人版】経営者が個人で寄付するメリット

経営者に役員報酬や資産運用による所得がある場合、ふるさと納税の寄付額の上限が比較的高くなりやすく、返礼品の選択肢も広がります。また、寄付を通じて地域と関わることができる点も、個人利用ならではの魅力です。
ここでは、経営者が個人でふるさと納税を行う際に知っておきたい主なメリットについて、具体的に解説します。
高い役員報酬に応じた高額控除が受けられる
経営者が個人でふるさと納税を行う場合、役員報酬などの所得状況によって寄付額の上限が決まります。役員報酬が高い場合、課税所得が大きくなりやすいため、結果としてふるさと納税の寄付上限額も高くなる傾向があります。
ふるさと納税では、一定の条件を満たした場合、寄付額のうち2,000円を超える部分が所得税や住民税の計算に反映されます。上限額を把握したうえで寄付を行うことで、制度の特性を活かしやすくなります。
ただし、控除を受けるには確定申告が必要となるケースも多いため、事前に制度の仕組みを理解しておくことが重要です。
株式譲渡益がある年は、ふるさと納税の寄付上限額に影響する場合がある
株式の譲渡益は申告分離課税として扱われ、給与所得とは別に税額が計算されます。
株式譲渡益そのものが、ふるさと納税の控除対象になるわけではありませんが、株式売却によって所得税・住民税が増えると、住民税所得割額をもとに算定されるふるさと納税の寄付上限額が高くなるケースがあります。
そのため、株式譲渡益が発生した年にふるさと納税を行う場合は、シミュレーションを通じて、自身の所得や税額に応じた適切な寄付額を確認しておくと安心です。
高額返礼品を贈答用や会食の話題に活用できる
個人でのふるさと納税では、寄付額に応じて多様な返礼品を選ぶことができます。中には、地域の特産品や品質にこだわった食品など、贈答用として選ばれるケースもあります。
こうした返礼品は会食の場などで話題にしやすく、地域の取り組みや特産品を紹介するきっかけになることもあります。返礼品を通じて地域の魅力を知ることで、地域への理解が深まる点も特徴です。
なお、返礼品の取り扱いや利用方法については、個人利用の範囲にとどめるなど、制度の趣旨を踏まえて活用することが大切です。
【企業版】法人が企業として寄付するメリット

企業版ふるさと納税は、法人が地方創生に資する事業に対して寄付を行う制度です。返礼品の提供はありませんが、一定の要件を満たすことで税制上の優遇措置を受けられる点が特徴とされています。
ここでは、企業が企業版ふるさと納税を活用することで得られる主なメリットについて、具体的に解説します。
寄付額の最大約9割が税額控除され実質負担が軽くなる可能性がある
企業版ふるさと納税では、一定の要件を満たした場合、法人税・法人住民税・法人事業税における税制優遇を組み合わせることで、寄付額に対する税負担が軽減される仕組みとなっています。
制度上、損金算入と税額控除の双方が適用されるため、結果として寄付額の最大約9割に相当する税負担軽減効果が見込まれるケースもあります。ただし、適用には上限や条件があるため、すべての寄付が一律に対象となるわけではありません。
そのため、企業版ふるさと納税を活用する際には事前に制度内容を確認し、自社の状況に応じて検討することが重要です。
企業のCSR(社会貢献)活動としてPRできる
企業版ふるさと納税は、地方創生や地域課題の解決を目的とした制度であるため、企業のCSR(企業の社会的責任)活動の一環として位置づけやすい特徴があります。
自治体が取り組む事業に賛同して寄付を行うことで、地域社会への貢献姿勢を示すことができ、企業イメージの向上につながる場合もあります。また、自治体の広報資料などで企業名が紹介されるケースもあり、社会貢献活動として社内外に発信しやすい点も特徴です。
CSRの観点から企業活動を整理したい場合に、制度の趣旨と親和性の高い取り組みといえるでしょう。
自治体との連携強化によりビジネス機会が広がる
企業版ふるさと納税を通じて自治体と関係を築くことで、地域の課題やニーズを知るきっかけになる場合があります。寄付をきっかけとした情報交換や意見交換を通じて、自治体との連携が深まることも期待されます。
ただし、企業版ふるさと納税は見返りを目的とした制度ではないため、ビジネス上の利益が保証されるものではありません。その点を理解したうえで、地域との関係構築の一環として捉えることが重要です。
地域と継続的な関わりを持つことで、新たな取り組みや協業の可能性が生まれるケースもあり、長期的な視点で活用する企業もあります。
個人版と企業版の制度上の違い

ふるさと納税の個人版と企業版ではどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、経営者が判断に迷いやすいポイントを中心に、個人版と企業版の主な違いを整理して解説します。
個人は返礼品あり、企業は経済的利益の供与が禁止
個人が利用するふるさと納税では、寄付に応じて自治体から返礼品を受け取ることができます。地域の特産品や体験型サービスなどが用意されており、寄付の動機づけの一つとなっています。
一方、企業版ふるさと納税では、返礼品を含む経済的利益の供与が認められていません。企業が寄付を行う目的は、あくまで地方創生や地域課題の解決への支援に限定されています。
この違いから、個人版は私的なメリットを含めて活用しやすい制度であるのに対し、企業版は社会貢献やCSRの観点から位置づけられる制度といえます。
対象地が個人は制限なし、企業は本社所在地不可
寄付先の選び方にも、個人版と企業版では違いがあります。個人のふるさと納税では、寄付先となる自治体に制限はなく、全国の自治体から自由に選ぶことができます。
一方、企業版ふるさと納税では、本社所在地の自治体への寄付は対象外とされています。これは、特定の地域への利益集中を避け、広く地方創生を促進するための制度設計です。
法人が活用する際には、自社の所在地以外の地域を選定する必要があります。制度の趣旨を理解したうえで、寄付先を検討することが重要です。
下限額は個人は2,000円〜、企業は10万円〜
寄付金額の考え方にも、個人版と企業版では違いがあります。個人のふるさと納税は2,000円から寄付が可能で、少額から始めやすい点が特徴です。
一方、企業版ふるさと納税では、原則として10万円以上の寄付が対象となります。そのため、法人として一定規模の寄付を行うことが前提となり、より計画的な判断が求められます。
寄付額の下限が異なることから、経営者は個人と法人それぞれの立場に応じて、無理のない活用方法を検討することが大切です。
経営者が押さえておくべきスケジュールと注意点

経営者がふるさと納税を活用する際には、寄付のタイミングや会計・税務上の扱いを正しく理解しておくことが重要です。ここでは、経営者が特に注意したい寄付の時期と、企業版ふるさと納税における会計処理のポイントについて解説します。
個人の寄付は12月まで、法人は決算月まで
ふるさと納税では、個人と法人で寄付できる期限が異なります。個人が行うふるさと納税は、原則として毎年12月31日までに寄付を完了させる必要があります。この期限を過ぎると、その年分の所得税・住民税の控除対象にはならないため注意が必要です。
一方、企業版ふるさと納税を法人として行う場合は、各法人の決算月までに寄付を行うことが求められます。決算期に合わせて寄付を行うことで、当期の税額計算に反映させることが可能になります。
個人と法人では寄付のスケジュールが異なるため、経営者はそれぞれの期限を把握したうえで、計画的に寄付を行うことが大切です。
企業版ふるさと納税の科目処理
企業版ふるさと納税を行う際には、会計上・税務上の処理にも注意が必要です。法人が行う寄付は、会計上は「寄付金」として処理されますが、税務上は一定の要件を満たすことで、税額控除や損金算入の対象となります。
そのため、寄付金額や寄付先、制度の対象要件を正しく確認したうえで、適切な科目処理を行うことが重要です。特に、企業版ふるさと納税は通常の寄付金とは取り扱いが異なるため、申告時に誤りが生じないよう注意が求められます。
実務上は、税理士などの専門家と連携しながら処理を進めることで、制度のメリットを正しく享受しつつ、税務リスクを抑えることができます。
まとめ
経営者にとって、ふるさと納税は個人と法人の両方で活用できる重要な制度です。個人版と企業版には制度上の違いがあり、経営者はそれぞれの特性を理解し、賢く使い分けることが求められます。寄付のタイミングや処理方法についても注意が必要です。
これらを踏まえ、経営者はふるさと納税を最大限に活用し、税負担の軽減と社会貢献を両立させることができるでしょう。
