合同会社の設立は節税になる!理由や設立した場合の節税シミュレーションを紹介
個人事業の売上が伸びてくると「思ったより税金が高い」と感じる場面が増えてきます。そんなときに検討されるのが、合同会社への法人化です。
合同会社を設立すると、所得税から法人税への切り替えや経費計上の幅の拡大、役員報酬の活用などにより、税負担を抑えられる可能性があります。
本記事では、合同会社が節税になる理由や設立の判断基準を解説するとともに、設立前後のシミュレーションなどを紹介します。
合同会社の設立で節税になる理由

合同会社を設立すると、個人事業主としての課税ではなく法人としての税制が適用されるため、税金の負担を抑えられる可能性があります。具体的には、法人税や経費の取り扱い、役員報酬の仕組みなど、様々な観点から節税につながる理由があります。
ここでは、合同会社が節税に有利とされる8つの代表的な理由を解説します。
1.所得税ではなく法人税が適用される
個人事業主の場合、事業で得た利益は「事業所得」として個人の所得税の対象になります。所得税は超過累進税率が採用されており、所得が増えるほど税率が高くなり、最大で45%に達します。
一方、合同会社は法人として「法人税」が課されます。法人税の場合は所得税ほど税率が段階的に上がらず、一定の範囲で比較的低率で課税されるのが特徴です。
一般的に中小企業の場合、課税所得が800万円までの税率が低く設定されているなど、所得水準や家族構成によっては、個人の超過累進税率より法人の実効税率の方が低くなるケースがあります。
つまり、事業所得が一定以上の場合は、個人事業よりも法人化した方が税金全体を軽減できることが多いのです。
2.経費計上の範囲が拡大する
合同会社として会計処理を行うと、個人事業主よりも広い範囲で経費として扱える費用が増えます。法人会計では、福利厚生費、交際費、役員報酬や役員退職金、会議費、研修費など、事業運営に関連する多くの支出を「損金」として認めてもらえるケースが多くなります。
例えば、個人事業主では自身の生活関連費との境界が曖昧で経費化できない支出も、法人の場合は明確に業務関連として処理しやすく、結果として課税所得を減らすことができます。
法人では役員報酬や退職金など、個人事業では扱えない支出を損金にできる点が大きな違いです。
3.役員報酬に給与所得控除が使える
合同会社では、経営者自身に対して「役員報酬」を支払う形になります。この役員報酬は、一定の要件を満たせば法人側では損金(経費)として処理できるだけでなく、個人として受け取る報酬には「給与所得控除」が適用されます。
給与所得控除とは、給与収入に応じて一定額を所得から差し引ける制度で、個人事業主の事業所得にはこの控除がありません。
合同会社にすることで、法人税負担を下げつつ、個人の所得税で使える控除も活用できるため、二重の節税効果が生まれる点が大きなメリットです。
4.家族従業員への支払いが柔軟になる
個人事業主でも配偶者や親族を「専従者」として給与を支払うことはできますが、個人事業の青色専従者給与に比べ、法人では給与額の設定や雇用形態の自由度が高い点が特徴です。
合同会社の場合、家族を役員や従業員として雇用し、事業に従事していれば給与を経費として扱いやすくなります。
従業員としての実態があれば、給与支払いを損金に計上しやすくなるため、個人事業主のときよりも家族への給与を通じた所得分散がしやすくなり、総合的な税負担の軽減につながります。
5.退職金を経費として計上できる
合同会社は法人格を持っているため、役員に対して退職金を支給することが可能です。退職金は税制上、一定の控除が認められているため、支給した年度の課税所得を大きく圧縮できます。
例えば、長年会社に貢献した役員に対して退職金を支給すると、その金額は法人の損金となり、その分だけ法人税の対象所得が減少します。また、退職金は個人の受取時にも「退職所得控除」などの優遇があるため、税負担をさらに抑える効果があります。
6.赤字繰越が最長10年に延びる
法人税には「欠損金の繰越控除」という制度があり、赤字が出た年度の損失を翌年度以降の黒字と相殺して税金を減らすことができます。合同会社など青色申告法人の場合、この繰越期間は最長10年です。
一方、個人事業主が青色申告をしても赤字の繰越期間は3年に限られます。そのため、事業が成長途中で赤字と黒字を交互に出しやすい場合でも、長期間にわたって損失を活用できる法人の方が税金を抑えやすいのです。
7.設立後2年間は消費税の納税義務が発生しないケースがある
合同会社は原則として消費税の課税事業者になりますが、資本金が1,000万円未満で特定期間の売上高等の要件など一定の条件を満たす場合は、設立後最初の2年間は消費税の納税義務が免除されるケースがあります。
これは個人事業主から法人に切り替えるタイミングにおいて特にメリットです。設立直後は売上や仕入が同時に増えることも多く、その間に消費税の納税義務がないのは大きな節税効果になります。
免税期間をうまく活用することで、手元資金の確保や初期投資の回収をスムーズにすることができます。
8.事業承継時の相続・贈与対策につながる
個人事業主の場合、事業用資産や権利を家族に引き継ぐ際、相続税や贈与税が大きな負担になることがあります。合同会社にしておけば、会社の資産や持分は法人として扱われるため、事業承継の方法が多様になります。
具体的には、後継者に株式や持分を譲渡する形にすることで、個人の財産として直接相続するよりも税負担を軽減できるケースがあります。また、法人化することで事業用資産と個人資産を分離しやすくなるため、整理された形での承継が可能になります。
個人事業主が合同会社の設立で節税する目安は年間所得「800万円」前後

個人事業主が合同会社を設立して節税効果を実感できるかどうかは、年間の所得水準や家族構成、社会保険料の負担状況などによって異なります。一般的に税負担の差が出やすいのは、所得が約800万円以上になった頃だといわれています。
これは、個人事業主としての累進課税(所得税)が高率になるのに対して、法人化して法人税を適用した方が税率メリットが出やすくなるからです。
たとえば、所得税の最高税率は非常に高くなるのに対し、法人税は一定水準で抑えられるため、利益が増えるほど法人化の節税効果が大きくなります。
ただし、法人化すると社会保険への加入義務が生じるほか、法人住民税の均等割など固定的な負担も発生します。また、消費税の免税制度にも要件があります。合同会社を設立しても節税効果が限定的になるケースもあるため、設立のタイミングは慎重に判断することが大切です。
個人事業主が合同会社を設立した場合の節税シミュレーション
個人事業主から合同会社へ法人化すると、税制の仕組みが大きく変わります。
ここでは、実際の数字を使いながら、設立前後でどのように税負担が変わるのかをわかりやすくシミュレーションします。法人化を検討する際の判断材料としてご活用ください。
設立前
個人事業主として年間所得1,000万円のケースを考えます。この場合、事業所得に対して課されるのは「所得税」と「住民税」です。所得税は累進税率が適用され、所得が増えるほど高い税率がかかります。
たとえば、所得税率は330万円以上の部分では20%、それ以上高くなると最高45%まで段階的に税率が上がっていきます。
1,000万円の課税所得の場合は、一部が33%の税率帯に該当し、これに住民税(約10%)が加わるため、実効税率はおおよそ30%前後になる可能性があります。
また、社会保険料や事業税なども所得に応じて発生します。経費として認められる範囲はありますが、必要経費と認められない生活費部分は控除できないため、課税所得が大きくなる傾向があります。
その結果、年間所得が高いほど税負担が重くなり、累進課税の影響を受けやすくなる点が個人事業主の特徴です。
設立後
合同会社として法人化し、同じく年間所得1,000万円の場合を見てみましょう。
法人では所得税ではなく「法人税」が適用されます。法人税は個人の累進課税とは異なり、一定の税率構造が採用されていますが、法人住民税や法人事業税もあわせて課税されます。
法人税は個人の累進課税ほど税率が高くならず、中小法人の場合、課税所得800万円以下の部分には軽減税率(約15%)が適用されます。ただし、住民税・事業税を含めた実効税率はおおむね30%前後になるとされています。
一般的に中小企業の場合、800万円以下の部分は軽減税率が適用され、以降の部分も一定率で課税されるため、所得水準や役員報酬の設定次第では税負担を抑えられるケースがあります。
また、役員報酬として自分に給与を支払う形にすると、その支払い分は法人の損金(経費)になりますし、個人側では給与所得控除が使えるため税額を圧縮できます。ただし、役員報酬は原則として定期同額給与などの要件を満たす必要があります。
さらに、法人にすると、役員報酬や退職金など、個人事業では扱えない支出を損金算入できる点が大きな違いです。交際費や研修費、退職金の準備金などを損金算入できるケースがあります。
消費税は資本金1,000万円未満の法人であれば設立後2年間は免税になる可能性があり、赤字が出た場合でも青色申告法人であれば最長10年間繰越控除が可能です。
このように、同じ所得でも法人化することで税率や控除の面で有利になる部分が多く、条件次第では節税効果が期待できます。
ただし、社会保険料の負担増や法人住民税の均等割など、法人化による新たなコストも発生するため、単純比較だけでなく総合的な判断が重要です。制度を正しく理解し、専門家と相談しながら計画を立てることをおすすめします。
合同会社と株式会社ではどちらの方が節税できる?

合同会社と株式会社はどちらも法人ですが、節税面では大きな違いはありません。税制上の基本的な扱いは同じで、法人税率・消費税などの税率や控除制度も共通です。ただし、内部の仕組みや運用面で節税のしやすさに多少の差が出ることがあります。
例えば、合同会社は設立手続きや維持管理コストが比較的低く、利益が一定額を超える場合の法人税負担も同じであるため、コスト面でメリットが出るケースがあります。法人税率そのものは合同会社と株式会社で差はありません。
また、株式会社の方が役員報酬や退職金の制度設計が柔軟という税制上の差もなく、税務上の取り扱いは原則として同じです。税務戦略として活用しやすい面がありますが、合同会社でも同様の節税策を講じることが可能です。
つまり、合同会社だから節税できる、株式会社だから節税できないという単純な違いはありません。「どちらが節税できるか」は法人形態そのものよりも、事業規模・利益の状況・役員報酬の設定や経費計上などの具体的な運用方法によって決まると考えるのが適切です。
契約形態や制度理解を踏まえ、税理士などの専門家と相談しながら最適な形態を選びましょう。
合同会社で節税する際の注意点
合同会社は節税効果が期待できる一方で、法人化に伴って新たに発生するコストや義務もあります。税負担を抑える面だけに注目するのではなく、社会保険料の負担増や赤字でも課される税金など、法人ならではの注意点を理解しておくことが重要です。
社会保険加入により支出が増える可能性がある
合同会社を設立すると、役員や従業員は社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が原則義務化されます。
個人事業主として働いていた場合、国民健康保険・国民年金で済んでいた方でも、法人化すると会社側(法人)と個人の双方で保険料を負担する必要が出てきます。これは税金とは別の固定的なコスト増となるため、注意が必要です。
たとえば、役員報酬を支払う場合、その報酬に対して法人側と個人側それぞれで社会保険料がかかります。
年間の負担額は報酬額によって変わりますが、一定以上の報酬を設定していると社会保険料だけで数十万円以上の支出になることもあります。ただし、実際の負担額は報酬額や加入する保険制度により異なります。
扶養に入れていた配偶者を従業員として雇うなどの工夫で負担を抑えるケースもありますが、法令上の要件や実態が求められるため、安易な運用はリスクとなりかねません。社会保険料の負担増を踏まえて、法人設立後の収支計画をしっかり立てることが大切です。
赤字でも法人住民税の均等割は発生する
法人税は赤字であれば支払う必要はありませんが、合同会社を含む法人には、たとえ赤字決算でも、法人住民税の「均等割」という税金が発生します。
均等割は、利益の大小に関わらず、法人の規模や資本金等に応じて自治体ごとに定められた一定額の税額が課される仕組みです。多くの自治体では資本金1,000万円以下であっても、標準税率の場合年間7万円前後の均等割を課しており、赤字であってもこの負担は避けられません。
また、資本金1億円超など一定規模以上の法人には「外形標準課税」という別の税金も適用される可能性があり、こちらも利益とは関係なく資本金や給与総額等を基準に算出されます。
個人事業主の場合、所得がゼロであれば所得税・住民税は発生しませんが、法人の場合は赤字であっても固定的な税負担が継続する点が大きな違いです。
さらに法人化すると、決算申告や法人税の申告手続きが必要になり、その分の税理士報酬や事務処理のコストも発生します。
節税効果を優先するあまり、こうした法人化後の継続的な負担を見落としてしまうと、思わぬコスト増につながる可能性があります。合同会社で節税を目指す場合は、税負担の全体像を総合的に把握した上で判断することが大切です。
まとめ
合同会社の設立は、一定以上の所得がある個人事業主にとって節税につながる可能性のある選択肢の一つです。
法人税の適用、経費計上の幅の拡大、役員報酬や退職金の活用、赤字繰越や消費税の免税期間など、法人ならではの制度を活かすことで税負担を抑えられるケースがあります。一方で、社会保険料の増加や法人住民税の均等割など、法人化による固定コストも発生します。
重要なのは「節税できるかどうか」だけで判断するのではなく、利益水準・将来の事業計画・資金繰りを踏まえて総合的に検討することです。
自社の状況に合わせたシミュレーションを行い、必要に応じて専門家に相談しながら、最適なタイミングで法人化を進めましょう。