【令和8年度最新】業務改善助成金とは?申請条件といくらもらえるかをわかりやすく解説
業務改善助成金は、事業場内最低賃金を引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った中小企業・小規模事業者に、設備投資費用の一部を助成する制度です。令和8年度は申請コースが50円・70円・90円に再編され、対象事業場 の範囲も拡充されました。最大600万円の助成が受けられます。
この記事では、令和8年度業務改善助成金の最新情報をもとに、申請条件・助成額・対象経費・申請の流れ・注意点まで解説します。
業務改善助成金とは

業務改善助成金(ぎょうむかいぜんじょせいきん)は、厚生労働省が設ける賃金引き上げ支援の助成金制度です。事業場内最低賃金(事業場で最も低い時間給)を一定額以上引き上げると同時に、生産性向上に資する設備投資等を行うことで、設備投資費用の一部が助成されます。
事業場の最低賃金引き上げと業務効率化の設備投資で申請できる助成金
業務改善助成金は「賃金引き上げ」と「設備投資」の2つをセットで行うことが申請の基本条件です。賃金を上げるだけでも、設備を導入するだけでも申請できません。令和8年度は事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、かつ生産性向上につながる機械設備・システム導入・コンサルティングなどを行うことが前提となります。
「事業場内最低賃金」とは、当該事業場で最も低い時間給を指します。ただし、業務改善助成金では雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者の賃金をもとに算定します。地域別最低賃金(国が毎年10月頃に改定する都道府県単位の最低賃金)とは別の概念です。
設備導入費用の75〜80%が助成される仕組み
助成される金額は「設備投資等にかかった費用×助成率」と「助成上限額」を比較して、低い方の金額が支給されます。令和8年度の助成率は事業場内最低賃金が1,050円未満の事業場では4/5(80%)、1,050円以上の場合は3/4(75%)です(令和7年度は1,000円が境界でしたが1,050円に変更されました)。
助成上限額は引き上げるコース(50円・70円・90円)と引き上げる対象労働者の人数によって決まり、最大で600万円です(90円コース・10人以上・特例事業者の場合)。自己負担は助成率に基づく残額(20〜25%)と上限超過分です。
申請できるのは中小企業・小規模事業者のみ(業種別の定義)
業務改善助成金の対象は中小企業・小規模事業者に限られます。ここでいう中小企業とは「中小企業基本法」上の定義に基づき、製造業・建設業等は資本金3億円以下または常時雇用従業員300人以下、卸売業は1億円以下または100人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下、小売業は5,000万円以下または50人以下です。
なお大企業が実質的に支配するみなし大企業(大企業が2分の1以上の株式を保有する等)は対象外です。事前に自社が中小企業要件を満たしているかを確認することが重要です。
申請は事業場(工場・事務所などの労働者が働く場所)ごとに行います。同一法人でも複数の事業場がある場合はそれぞれ別々に申請する必要があります。同一事業場の申請は年度内1回限りです。
業務改善助成金を申請するための3つの条件

令和8年度の業務改善助成金を申請するには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。令和7年度から変更された点もあるため、最新の要件を確認してください。
条件1:事業場内最低賃金が令和8年度地域別最低賃金未満であること
令和8年度から、対象事業所の条件が大幅に拡充されました。令和7年度までは「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内の事業所」のみが対象でしたが、令和8年度は「事業場内最低賃金が令和8年度地域別最低賃金額未満の事業所」まで対象範囲が広がっています。
たとえば令和8年度の地域別最低賃金が改定前X円から改定後X+63円に引き上げられた地域では、事業場内最低賃金がX+62円以下(改定後の地域別最低賃金未満)の事業所が対象になります。改定前の基準では差額50円以内(X円〜X+50円)のみが対象でしたが、X+51円〜X+62円の事業所も令和8年度から申請できます。
ただし、事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金と同額(改定後の最低賃金と同じ)の場合は対象外です。また解雇・賃金引き下げ等の不交付事由に該当しないことも必要です。
条件2:事業場の最低賃金を50円以上引き上げること
令和8年度から申請コースが再編され、引き上げ額の最低ラインは50円以上になりました(令和7年度は30円以上)。引き上げは1回で行う必要があり、複数回に分けることは認められていません。また引き上げ後の事業場内最低賃金額と同額を就業規則等に定めることが義務です。
引き上げの対象労働者は週所定労働時間20時間以上の雇用保険加入者で、雇入れ後6か月を経過した労働者です。 (令和8年度から「雇用保険被保険者」に限定されました)。賃金引き上げは申請よりも後に行う必要があります。地域別最低賃金の発効に合わせて引き上げる場合は発効日の前日(令和8年11月30日まで)までに完了させる必要があります。
条件3:業務効率化に繋がる設備投資等を行うこと
POSレジシステム・配膳ロボット・在庫管理システム・リフト付き特殊車両・業務用機械設備など、生産性向上に資する設備投資等が必要です。コンサルティングや教育訓練も対象になりますが、設備投資費用の合計が助成金の計算基礎となるため、設備の導入が中心になることが一般的です。
設備・機器の購入は必ず交付決定を受けた後に行うことが必須です。交付決定前に購入した設備は助成対象になりません。また助成対象は申請した事業場内で使用する設備に限られます。令和8年度から、一般的な乗用車や汎用車両は助成対象外となるため注意が必要です。一方、リフト付き特殊車両など、生産性向上に資する特殊用途の車両については対象となる場合があります。
業務改善助成金でいくらもらえるか

令和8年度の助成上限額は申請コース・引き上げる対象労働者の人数・事業場規模によって決まります。最大で600万円が助成されます。
引き上げ額(50円・70円・90円コース)と引き上げ人数別の助成上限額
令和8年度の申請コースは50円・70円・90円の3種類です(令和7年度の30円・45円・60円・90円から再編)。引き上げる労働者数の区分も変わり、1人・2〜3人・4〜5人・6〜7人・8人以上・10人以上(特例)となっています。
各コースの助成上限額(事業場規模30人未満の事業者の場合)は以下の通りです。
【50円コース】
1人=30万円、2〜3人=40万円、4〜5人=70万円、6〜7人=90万円、8人以上=110万円、10人以上(特例)=130万円。
【70円コース】
1人=40万円、2〜3人=50万円、4〜5人=130万円、6〜7人=180万円、8人以上=230万円、10人以上(特例)=300万円。
【90円コース】
1人=90万円、2〜3人=150万円、4〜5人=270万円、6〜7人=360万円、8人以上=450万円、10人以上(特例)=600万円。
事業場規模30人以上の場合の助成上限額
事業場の規模が30人以上(右記以外の事業者)の場合、一部の人数区分で異なる上限額が設定されています。30人以上の場合の助成上限額は以下の通りです。
【50円コース】
1人=40万円、2〜3人=70万円、4人以上は30人未満と同額。
【70円コース】
1人=50万円、2〜3人=100万円、4人以上は同額。
【90円コース】
1人=100万円、2〜3人=240万円、4人以上は同額。
なお助成される金額は「設備投資等の費用×助成率」と「助成上限額」を比較して低い方が実際の支給額です。たとえば事業場内最低賃金が1,040円の事業場で8人の労働者を90円引き上げ(90円コース)、設備投資額が600万円の場合は、600万円×4/5=480万円と助成上限額450万円を比較して450万円が支給されます。
10人以上の上限額区分(最大600万円)は「特例事業者」が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合にのみ対象となります。特例事業者とは①事業場内最低賃金1,050円未満、または②物価高騰等の外的要因により直近6か月間平均の利益率が前年度比3%ポイント以上低下した事業者です。
令和8年度の申請期間と事業完了期限
令和8年度の申請期間は令和8年9月1日から、申請事業所に適用される地域別最低賃金の発効日の前日(例:10月1日発効なら9月30日)までです。賃金引き上げ期間も令和8年9月1日から地域別最低賃金の発効日の前日または令和8年11月30日のいずれか早い日までです。事業完了期限は交付決定年度の令和9年1月31日です。
予算の範囲内での交付となるため、申請期間内に募集を終了する場合があります。また同一事業所の申請は年度内1回限りです。申請を検討している場合は早めに準備を進めてください。
業務改善助成金の対象になる設備・経費の一覧

業務改善助成金の助成対象となるのは、申請した事業場における生産性向上に資する設備投資等です。令和8年度から一部の対象経費が変更されているため、最新の要件を確認してください。
配膳ロボット・在庫管理システムなど機械設備・システムが主な対象
助成対象となる経費区分の主なものは機器・設備の導入です。具体的な事例として、POSレジシステム導入による在庫管理の効率化・リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮・配膳ロボットの導入によるホール業務の省力化・検品作業の自動化設備・医療用機器などが挙げられます。設備が申請事業場の生産性向上に直結していることが証明できる必要があります。
なお令和8年度から、令和7年度まで特例として助成対象となっていた自動車(特殊用途自動車を除く)は助成対象外となりました。介護施設の送迎に使用するリフト付き特殊車両(福祉車両)は特殊用途自動車として引き続き対象ですが、一般乗用車・トラックなどは対象外です。
業務効率化のための教育訓練やコンサルティング費用も対象になる
設備投資だけでなく、業務効率化を目的とした経営コンサルティング(国家資格者による顧客回転率向上のための業務フロー見直しなど)や顧客管理システムの構築費用も助成対象となります。外部専門家への指導・助言費用も含まれる場合があります。
ただし、コンサルティング費用等だけでは申請が難しいケースも多く、機械設備の導入と合わせて申請することが一般的です。計上できる経費については管轄の都道府県労働局に事前に確認することをおすすめします。
車両やパソコンが対象となる例外的な条件(物価高騰要件・特殊車両)
パソコン・スマートフォン・タブレット等の端末と周辺機器の新規導入は、通常は助成対象外です。ただし「物価高騰等要件」(直近6か月間平均の利益率が前年度比3%ポイント以上低下)に該当する特例事業者は、これらのPC等を新規導入する場合に助成対象として認められる場合があります。
また車両については、一般乗用旅客自動車運送業・貨物自動車運送業など特定の業種で使用するリフト付き特殊車両等は対象となります。令和8年度から一般自動車の特例は廃止されたため、車両を含む申請を検討する場合は事前に確認が必要です。
業種別に見る業務改善助成金の活用事例

業務改善助成金は幅広い業種で活用されています。自社に近い業種の活用事例を参考にすることで、助成対象となる設備投資のイメージを具体化できます。
介護・医療業:リフト付き福祉車両・洗濯乾燥機などの導入
介護施設では利用者の送迎に使用するリフト付き特殊車両(福祉車両)・大型洗濯乾燥機・入浴補助装置・電動ベッドなどの導入が助成対象となります。介護スタッフの身体的負担を軽減し作業効率を高める機器は生産性向上に直結するとして認められやすいです。医療機関では電子カルテシステムの導入・検体搬送システムなども対象となった事例があります。
飲食業:配膳ロボットの導入でホール業務を省力化
飲食業では配膳ロボットの導入が近年増えています。ホールスタッフの移動・配膳業務を自動化することで、少ない人員で多くのテーブルを担当できるようになり、生産性向上の効果が明確なため助成対象として認められやすいです。またPOSレジシステムの導入や予約管理システムの構築なども多く活用されています。
少ない従業員で効率的に運営できる設備への投資が賃上げとセットで行えるため、人件費の増加を設備効率化でカバーするという観点から助成金を活用する事業者が多いです。
配膳ロボットは初期費用が高額になりがちですが、70〜90円コースを活用して複数の対象労働者を含めて申請することで、助成上限額を最大化して導入コストを大幅に削減することができます。申請計画の段階からコースと賃上げ対象人数を試算して最適な申請設計を行うことをおすすめします。
製造・卸売業:在庫管理システムや研修費用を活用
製造業や卸売業では在庫管理システムの導入・生産ライン自動化機器・フォークリフトの入れ替え(特殊仕様のもの)・品質検査装置などが活用されています。また製造効率向上のための技術研修や業務効率化のためのコンサルティング費用も計上できる場合があります。設備投資額が大きくなりやすいため、90円コースで申請するケースも見られます。
業務改善助成金の申請から受給までの流れ

業務改善助成金の申請は都道府県労働局への書類提出から始まります。交付決定前に設備を購入しないことが大原則です。以下のステップを確認してください。
STEP1〜2:申請前の条件確認と交付申請書・事業実施計画書の提出
まず事業場内最低賃金・地域別最低賃金を確認し、申請コースを決定します。申請に必要な書類は交付申請書・事業実施計画書・見積書(設備の概算費用がわかるもの)・就業規則(または賃金規程)等です。書類を揃えて事業所所在地を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に提出します。
提出前に厚生労働省ウェブサイトの申請書作成ツール・最新の交付要綱・要領を確認してください。申請内容・様式は年度によって変更されることがあります。不明点は業務改善助成金コールセンター(0120-366-440、平日9:00〜17:00)への問い合わせが便利です。
STEP3〜5:交付決定後に設備導入と賃金引き上げを実施
労働局による審査を経て交付決定の通知が届いたら、申請内容に沿って事業を実施します。設備の購入・支払い・賃金の引き上げをこの段階で行います。賃金引き上げは就業規則等に引き上げ後の事業場内最低賃金額を定めるとともに、実際の支払いに反映させます。
引き上げ後の就業規則(賃金規程)は改訂・施行が完了していることが実績報告時に求められます。また設備の購入は交付決定の通知日以降に行った分のみが助成対象です。契約・発注のタイミングにも注意してください。
STEP6〜8:実績報告・支給申請・消費税報告書の提出
事業完了後(令和9年1月31日まで)に事業実績報告書・助成金支給申請書・領収書等の証拠書類を労働局に提出します。労働局が報告内容を審査し、適正と認められれば交付額が確定し、助成金が振り込まれます。
消費税の仕入税額控除を行う場合などは、受給後に「消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額報告書」の提出が必要となる場合があります。 助成金の受給後に設備を業務外で使用したり売却したりすることは返還事由になる場合があるため、導入後の管理にも注意が必要です。
業務改善助成金を申請する際の注意点

業務改善助成金は制度を正しく理解して申請しないと不支給・返還のリスクがあります。主な注意点を確認してください。
設備・機器の購入は必ず交付決定後に行う
最も重要な注意点が「交付決定前に設備を購入しない」ことです。申請書を提出した後でも、交付決定の通知が届く前に設備を購入・発注すると助成対象外となります。「申請したから大丈夫」と先行して購入してしまうミスが多発していますので、必ず「交付決定通知書を受け取ってから購入する」という手順を徹底してください。
解雇・賃金引き下げをした直近6ヶ月間がある場合は申請できない
申請前の6か月以内に①雇用保険被保険者を解雇した、②正当な理由なく賃金を引き下げた、③最低賃金の減額特例(精神・身体の障害等による場合)の許可を受けていた、などの不交付事由がある場合は申請できません。これらに該当しないかを事前に確認することが必要です。
地域の最低賃金が引き上げられる前に申請する方が有利
令和8年度の業務改善助成金は令和8年9月1日が申請開始日です。地域別最低賃金は例年10月前後に改定(発効)されるため、9月中に申請を済ませておくことで賃金引き上げ期間に余裕が生まれます。地域別最低賃金の発効後(例:10月1日以降)に賃金引き上げをしても申請対象にならないため、スケジュール管理が非常に重要です。
他の賃上げ系助成金と同一対象者への併給ができない場合がある
業務改善助成金と同時期に他の賃上げ支援系の助成金を申請する場合、同一の賃金引き上げを対象にした重複申請(同一事業・同一対象者への二重支給)は認められない場合があります。業態転換助成金やキャリアアップ助成金等と併用を検討する場合は、それぞれの申請要件を確認したうえで管轄労働局に事前確認することをおすすめします。
まとめ
令和8年度業務改善助成金は申請コースが50円・70円・90円に再編され、対象事業所の範囲も拡充(事業場内最低賃金が地域別最低賃金未満まで)されました。最大600万円が助成され、助成率は80%(事業場内最低賃金1,050円未満)または75%(1,050円以上)です。
申請期間は令和8年9月1日から地域別最低賃金発効日の前日まで。交付決定前の設備購入は絶対に避け、最新の要綱・要領を確認したうえで早めに準備を進めましょう。